書店に行くと、発達障害関連の本が溢れている。いい本もたくさん、いまいちの本もまあまあ、トンデモ本も未だにある。
『自閉症を克服する』は、ケーゲル夫妻(その道では有名な人)の妻の方が書いた、ABA(応用行動分析)の本だ。
最近聴きに行った講演会で、PRT(Pivotal Responce Training)というのがABAの中で流行っていると聞いて、じゃあ、その本を読んでみようと思って購入した。
こういうきっかけがないと、なかなか『自閉症を克服する』なんて題の本は買わないのだ。だって”克服する”という言葉に、非科学的な臭い(うさんくさいともいう)がプンプンするから。
かつて(今も?)ロバースという人が、早期に徹底的な行動療法を行なうことで、自閉症を治す、と言って、大論争を巻き起こした。自閉症を治すというのは明らかに言い過ぎだった。
彼らは治したと言っているが、自閉症に限らず発達障害は自然な成長の経過で軽くなることがあるし、単にIQが上がったとか、あるいはカナータイプがアスペルガータイプに変わったことを指していることもあるからだ。
で、最近流行のPRTはどうなんだ、と。ロバースとどう違うんだ、と。
確かに、ロバースより柔軟になっている。参考になるアイディアもたくさんある。
が、しかし・・・。
行動に介入し、変化させる。
変化させる=治療する=定型発達に近づける。
ABAとはそもそもこういうものなのかもしれない。
著者は堂々と、きっぱりと、あまりにも遠慮なく、読み手の親に「○○しなさい」とメッセージを送る。
「○○すれば、子どもはきっとよくなる」と。
親はがんばってがんばってがんばって、子どもにどんどんどんどん介入して、そしたら子どもはきっと良くなる。あなたの子どもの脳みそに、いい神経回路を伸ばそうじゃないか!!と。
行動療法のアイディアはかなり役に立つ、それは間違いない。ある程度、神経回路も伸びるだろう。
ABAがしっくりくる親子がいることも分かる。
でも、やはり認知特性に配慮することや、自閉症文化の尊重(違いを認める)を組み込んだ療育の方が、理にかなっていると思う。得意を生かすこと、違うことを認めることは、ついでにではなく、最初から最も配慮されるべきことだろう。
(この間アフリカに行ったときにも思ったのだが、最近のABAは、認知特性に対してやや配慮するのだ。)
この『自閉症を克服する』は、いろいろ分かっている人が、アイディアを借りるために読むにはいい本だが、初心者にはお勧めしない。
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