さっきまで、TVでトップランナーを見てたんだけど、今日は写真家の本条直季さんがゲストだ。私は特に写真に詳しいとか、本条さんのファンだったりはしないんだけど、彼の発言と作品の関係がとても面白かったので記事にすることにした。
本条さんは、古いタイプのカメラで高いところから風景を撮って(風景の中に人がたくさんいたりもする)、風景の写真なのにジオラマに見えるという、すごい不思議な写真世界を作り出す。
現実なのに、作り物に見えるのだ。
作り物に見えるのに本物、というのは、魔法で閉じ込められた世界を見るようで、とても落ち着かない気持ちになる。
本条さんは、14歳のときにお母さんを亡くした。少年の本条さんは家にいたくないあまり、夜、街を歩いたり、自転車で走っていたという。そのとき、妙に現実感が薄れるような感覚を味わっていたというのだ。
もし、本条少年が私の診察室に現れていたら、「離人感+」と、カルテに書くだろう。
本条さんの脳の中で起きていたことにラベルを貼るとすれば、まあ、離人感+でいいのだけど、離人感を写真で表現すると、こんな風になるのだな、と思ったのだ。
トップランナーは、彼の作品にみょうちくりんなキャプションを付けていた。「たった一つしかない地球への愛」とか、そんなの。
私は、別に地球への愛は感じなかった。
現実を氷付けにしたような不安感や、不安だけじゃない、距離感からくる安心感もある。とにかく、何が現実で何が空想か分からなくなって、見る人が混乱するのだ。
あれは、離人感+を君にも味あわせてあげよう、ということなんじゃないの、と私は思った。
そこから何を汲み取るかは、あなた次第、みたいな。
それにしても、心の動きを全部医学モデルで考えようとすることの場からしさよ!
医学モデルは病気のモデル。
離人感+は病気でもなんでもない。作品作りのエネルギーなんだからねぇ。
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